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Winter No.27




Letters from
Abroad

--- 高知県出身で、現在、
青年海外協力隊として
ご活躍されている方々の
お手紙をご紹介します。---



「トンガ・エウア島の紹介」 

青木 順子
(職種)日本語教師 (派遣国)トンガ王国


 エウア島は、首都ヌクアロファのある本島からボートで1時間半ないし2時間の所にある小さな島です。船着場のまわりに、銀行、郵便局、文房具屋、工具店、小さいスーパー、雑貨屋がそれぞれ一軒ずつあり、後は道路沿いに村が点在するだけで島全体がかなりの田舎です。野菜や芋類、果物以外はすべて本島からの輸入に頼っています。天候が悪くてボートが欠航すると、パンもガスも手に入りません。そういう時に限って、ガスが切れてしまうんです。一度天気が崩れるとしばらく続くので、ガスなしの状態が何日か続くわけです。
 生活に必要な物は最低限手に入ります。でも種類は少なく、また調味料や嗜好品はあまりありません。もちろん、電化製品の購入や写真の現像も無理です。まあ、慣れてしまえば、なければないで何とかなるもんです。
 さて、みなさん、トンガと聞いて何を想像しますか?おそらく、どこまでも続く白い砂浜にヤシの木、エメラルドグリーンの海、さんさんと降り注ぐ太陽の光でしょうか。北の方にある、つまり赤道寄りの島には、観光パンフレットに載っているような、みなさんがイメージするような景色があるんですが、うーん、エウアはちょっと違います。ここ、エウア島には白い砂浜はあまりなく、海岸は岩場か絶壁なんです。そして、遠浅の海ではないので透き通るようなエメラルドグリーンの海は期待できません。
 こちらは6月〜9月が暑くない季節ですが、意外にもこの季節、寒いのです。靴下、セーターが必要な日もあります。寝るときは毛布か掛け布団が要ります。しかもエウアは風がとても強く、天候が悪く強風の日など、「南国」にいるとはとても思えません。ヤシの木もバナナの木も至るところに生えていますが、高知の人間にとって、それ程新鮮な景色ではありません。



「ルーマニアの子どもたちとともに」 
森下 真琴
(職種)青少年活動 (派遣国)ルーマニア


 ルーマニアには学校教育以外にも、教育省が管轄する教育の場があります。子どもたちが余暇の時間を使って音楽やダンス、スポーツ、外国語などを学ぶ「こども宮殿」です。私の配属先もそのうちの1つです。  
 現在、私は週に6コマ(1コマ100分)を受け持ち、10歳から18歳の子どもたちに日本語教育及び日本文化紹介を行っています。活動のいくつかを簡単に紹介します。
 生け花は花材がなかなか手に入らないので、配属先の庭の花や道端の野花を使います。花器のかわりはスープ皿。「こっちが真で、副はあっち…。」子どもたちはノートの図を見ながらにぎやかに生けます。この間は、私の出身地、佐川町から送っていただいた半紙と墨を使って書道を行いました。半紙は1人2枚、練習紙には新聞紙。書道道具は筆しかないので、硯の代用品には側面を切ったペットボトルを使いました。こんな書道でも喜ばれます。ただ絵を書くような感覚らしく、子どもたちは何度注意しても私の目を盗んで墨を上塗りします。知らないふりで見過ごし、ふと「何度も塗ったでしょ」と言うと、困った顔をする子どもたち。その様子には微笑を誘われずにはいられません。また、サマーキャンプでの縄ひもを使ったわらじ作りも好評でしたが、それはどちらかというと引率の先生の方が一生懸命のようでした。
 早いもので、ここでの生活ももう一年。はじめての日本人に対する町の人々の薄れない好奇心と、時々混じる東洋人への差別意識。私は大学卒業後、日本の社会すら知らずに協力隊に参加しました。時には心無い人の言葉に傷つき、時には同僚の身勝手さに半泣きになりながら、「マコセンセイ」と私を呼ぶかわいい子どもたちに囲まれ、今彼らとともに私もまた成長しつつあるのが分かります。私が日本に帰る1年後、彼らに、そして縁あって来たこの町の人々に、少しでも日本を身近に感じてほしいと心から願っています。

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